NOVEL 『慕情』の 1 と 2 の間にある、犬夜叉かごめの夜の事。

二人きりで過ごす夜をここで書いています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

慕 情   ― その夜に ―         (2006.11.3)

 

 

 

 










 

 

今、この瞬間こそが、夢心地・・・とでもいうのだろうか。

 

「かごめ・・・。」

 

大きな手の平が抱きしめたかごめの頭をそっと包み込みながら、

やさしく撫でる。

 

重ねた唇にも力が入ってきたのか、いつになく深く味わうように

何度となく角度を変えては吸い付き、離れることを許さない。

 

「ん・・・ん、・・・はぁ・・・。」

 

一瞬の隙を見計らうかのように、離れた口元から

吐息交じりの息継ぎ。

 

かごめを胡坐の上に乗せたまま、

ぐっと抱きしめた腕にますます力が入る。

 

「うう、・・・んん・・・。」

 

伏せた金の瞳は、腕の中に包み込んだかごめを見つめ、

何度となく口付けた。

 

時折、牙が吸い付いた下唇に軽く当たる。

かごめもそれに応えるように、押し込んでくる牙を自分の舌でなぞる。

 

 

 

包み抱きしめていた手は、浴衣を羽織った

かごめの体の線を辿るかのように、

つ・・・と上へ下へと動き始めた。

 

「なぁ、かごめ・・・。」

 

顔を上げ、細めた瞳が何を言いたいのか・・・。

 

かごめは犬夜叉の唇に指をあて、同じように目を細めながら微笑んだ。

 

「かごめ・・・。」

 

腕の中に包み込んだ愛しい女の名を呼ぶ声が耳元で囁く。

 

「・・・犬夜叉・・・。」

 

溶ける様な息を感じ、二人は固く抱きしめあった・・・。

 

 

 

 

 

 

茣蓙ひとつない荒れた小屋の中は明かりさえない。

 

唯一、外れかけた戸の隙間から差し込む月明かりが

絡み合い始めた二人をそっと照らしていた。

 

 

背に回した手がしゅるしゅる・・・と音を立て、

帯を解いていく。

 

伊達帯びに手を掛け、固い結び目に力をこめたとき。

 

犬夜叉は、衣を脱ぐと固い床板の上へと広げ、

静かに抱き抱えたかごめの体を横たえた。

 

 

はらり・・・と浴衣の前を捲ると、

細い首から下が線を描くように浮かび上がり、

まぶしいほどに白い肢体が目に入る。

 

「・・・・・。」

 

固唾を飲み込むように、喉仏がごくりと唸る。

 

犬夜叉は、かごめの足の上に跨り、

真上から、その姿を見つめた。

 

 

蝶の羽を見るかの如く、襟に手を入れ、そっと左右へと広げる。

その内側に潜むは、美しく眩い愛しい女の白い体。

 

犬夜叉は静かに横たえた肢体をなぞり、

広げられた白い体の上に線を描く。

 

ゆるやかにと体の上を動く手に、

ぴくっと反応しつつも、かごめは顔を逸らし、

固く目を閉じていた。

 

 

「かごめ・・・、こっちみろよ・・・。」

 

 

その言葉に傅き、そっと目を開いたが、

その視線は正面の犬夜叉を見つめることはなく、

未だ残る恥じらいにただ頬を染めていた。

 

「こっち向けよ・・・。」

 

低く掠れた声がもう一度言う。

 

犬夜叉は真上から手を伸ばし、かごめの顎を掴み、

自分のほうへと向けると、再び唇を落とした。

 

「あ・・・、んん・・・。」

 

その唇が首筋を這い、鎖骨を通り、

やがて、かごめの肩から浴衣の襟を広げつつ、

下へ下へと向かっていく。

 

 

「・・・あ・・・。」

 

 

漏れてくる声に耳を澄ます。

 

広げ晒した乳房に手を当て、

夜風に冷たくなっていた頬を摺り寄せた。

 

 

「お前の・・・鼓動が聞こえる・・・。」

 

「・・・・・。」

 

「お前はあったけぇ・・・。」

 

 

その言葉にかごめは黙ったまま、胸に沈み込む頭をそっと抱きしめた。

 

「犬夜叉・・・・。」

 

 

暫く、その心地よさに浸ると、身を起こし、

犬夜叉はもう一度唇を合わせた。

 

 

 

みし・・・と軋む床板の音が部屋の中で静かに響く。

 

 

 

 

犬夜叉は、かごめの足の間に自分の足を割り込ませた。

 

広げた浴衣を全て取り払い、かごめの全身が目に入る。

 

「綺麗な体だ・・・。」

 

「犬夜叉・・・。」

 

「お前は綺麗だ・・・。」

 

犬夜叉は、自分の身についていた衣を脱ぎ捨てると、

体をかごめの上へと重ね合わせた。

 

圧し掛かる重みと温もりが重なった部分の温度を上げていく。

 

「犬夜叉もあったかいよ・・・。」

 

「そうか?」

 

「ぜーんぶ、あったかい・・・。」

 

背に手を回し、いつも自分を守ってくれる厚い胸板へと口寄せる。

 

 

(あたしを守ってくれている・・・)

 

 

どんなに傷ついても立ち上がっては身を挺し、

かごめを守り抜いてきた、その体に愛情がない訳はない。

 

 

「抱いて・・・。」

 

 

初めて、口にした言葉。

 

折り重なった下のほうから、そっと背に手を回し、

かごめ自身も愛しい男の体を求めた。

 

欲望やら性欲から出た言葉ではない。

ただひとつになりたい思いがかごめの口から自然に出てきた。

 

「かごめ・・・!」

 

緋の衣の上で絡み合い、重なり合う動きは徐々に激しさを増し、

お互いを犇くように強く抱きしめ合う。

 

 

かごめの言葉に堰を切った犬夜叉は、

じっくりと味わっていた、その体を今度は激しい愛撫へと形を変え、

貪り始めた。

 

固くなった蕾と蜜が溢れ出した花芯。

 

そっと触れ、確かめたかごめの体は、

既に犬夜叉の体を待ちわびているかのように、

身を火照らせていた。

 

手をかごめの花芯に触れ、指先から伝う溶けた感触。

 

(俺に応えてくれる・・・・)

 

初めての交わりから、もう何度目か。

 

自分の体に素直に反応し、快楽の海にと

共に身を投げ出してくれるかごめの全て。

 

長い年月をたった一人きりで生きてきた男に

初めて得たぬくもりが、一人の少女、かごめを

女にしていくことで、手に入れた実感を湧かせる。

 

(お前を離なさねぇ!)

 

止め処なく沸き起こる男の欲望がその頭角を出したかのように

しなやかで華奢な白い肌を支配していく。

 

 

 

「ああ・・・!いやぁ!」

 

「かごめ・・・!」

 

指の動きに高ぶっていく感情は、少女だった面影さえ吹き飛ばし、

一人の女へと移り変わらせた。

 

 

(俺のものだ・・・!誰にも触れさせやしねぇ!)

 

 

犬夜叉は、強く掴んだ乳房を激しく揉みしだきながら、

かごめの片足に手を掛け、大きく持ち上げた。

 

その中心の花芯へと舌を這わせ、溢れ出る蜜の味を確かめる。

 

「はぁぁ・・・!・・・ああ!」

 

怪しく動く舌に合わせ、何度も体を逸らせるも、

口から出る悦は、高まるばかり。

 

「かごめ・・・、感じてるか・・・?」

 

「あ・・・!・・・い、・・・いい!」

 

名前を呼ぶ声さえ、敏感に感じるその体は、

犬夜叉の腕の中で何度となくのたうち、蠢かせらる。

 

 

「ああ!・・・あ!・・・ああ!」

 

 

焦らすこと、攻めること、・・・そして、優しく包み込む。

 

幾度となく押し寄せる激しい愛撫は、

かごめを少女から女へと変え、その頂点へと誘っていく。

 

 

「あ!・・・もう、・・・ああぁ!」

 

 

かごめの腰が犬夜叉の自身へと向きを変え、

下腹部を疼かせる火を求め狂い始めた。

 

 

「もう・・・、だめ・・・、おね・・・がい・・・!」

 

「・・・いいか・・・?」

 

「ああ!・・・して・・・!」

 

「かごめ!」

 

 

かごめの体の芯を貫くように、勢いよく自身が差し込まれる。

 

 

「あ!・・・ああ!」

 

「う・・・、うぅ・・・!」

 

 

いつにない締め付けを感じつつも、

激しい腰の動きを止めずに何度も何度も突き上げては、

自分の体の下にいるかごめを悶え感じさせる。

 

 

「ああ!・・・あ!・・・いや・・・、あぁ!」

 

「はぁ・・・!あ・・・!」

 

 

かごめの顔を挟み込んだ両肘を立ち上がらせ、

身を起こすと、そのままかごめの体を引き上げた。

 

 

「ああ!・・・きゃっ・・・!」

 

「まだ・・・、まだだ・・・!」

 

 

かごめの上半身を起こし、差し込んだ自身を

再び、激しく動かし始めた。

 

 

「あん!・・・ああん!・・・あ!」

 

「はぁ・・・、あ・・・!」

 

 

掴んだ腰に爪が食い込む。

汗ばんだ肉体が月夜に艶かしく照らし出され

激しい突き上げに乳房さえ大きく揺さぶられた。

 

ああああ!・・・いやぁ!」

 

 

 

 

 

かごめの体の下のほうで、自身を銜えた部分に

一瞬の締め付けと引きつりが走った。

 

(・・・もういっちまった・・・か?)

 

何度かの突き上げの後、かごめの顔は恍惚とし、

犬夜叉の肩に顔を落とした。

 

だが、犬夜叉の動きはまだ続く。

 

「もう・・・、限界・・・よ・・・。」

 

「・・・だめだ・・・、もう少し・・・、後少し・・・だ。」

 

 

力を失ったかごめの体を支えながら、もう一度緋の衣の上に寝かせた。

 

差し込んだ部分には、まだ満たされぬ固い肉棒が

幾度も幾度も激しく突き上げる。

 

 

「う・・・、ああ・・・!」

 

一筋の涙が頬を伝う。

 

「・・・はぁ、・・・かごめ!・・・今・・・!」

 

「はぁ・・・、あ!・・・あぁ!」

 

「・・・・はう・・・!」

 

 

そのとき、かごめの中で犬夜叉の思いが放たれた。

 

さっきまでの激しい嵐のような動きが嘘のように、

静かにかごめの上へと圧し掛かる。

 

 

 

 

「かごめ・・・。」

 

「・・・・・・。」

 

涙を流しつつも、僅かに上げた口の端が

悦びに満ち溢れていた行為だったという無言の返事を犬夜叉へと返す。

 

 

優しく唇を重ね、官能を分かち合えた繋がりに

嬉しさを感じ合う。

 

 

 

 

 

「お前を誰にも触らせねぇ・・・。」

 

「・・・犬夜叉だけ・・・だから・・・。」

 

 

 

 

 

「かごめ・・・、・・・俺だけの・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

どのくらいの時間を広げた衣の上で過ごしたのか。

 

かごめは犬夜叉の腕の上で少しばかりの間、

静かに寝息を立てていた。

 

 

犬夜叉は、腕の中の愛しくて病まない白い肉体を

見つめては、その黒髪に唇を落とす。

 

 

「いつでも、傍に・・・、傍にいてくれ・・・。」

 

 

耳元で小さく呟く声。

 

かごめは、寝返りをうちながらも、

その口元がふっと上がったように犬夜叉には思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

End